目次
「法人カードは年会費無料カードが欲しい。」
「法人カードなんて、使えれば良いのだから、年会費無料の方が良いに決まっている。」
・・・
と、年会費無料の法人カードを比較検討している方も多いのではないでしょうか。筆者は、会社経営者であり、法人カードは10枚以上所有しています。その経験上、年会費無料の法人カードはおすすめしません。その理由を解説します。
年会費無料の法人カードを経営者がおすすめしない最大の理由
損をするから
です。
「無料なのに損する!?」
意味が分からないかと思いますが、年会費無料の法人カードが損をする理由を解説します。
理由その1.年会費無料の法人カードよりも、年会費有料の法人カードの方がポイント分お得になる!
年会費無料の法人カードの代表格は
ライフカードビジネス(法人カード)/一般カード
ライフカードビジネスライトプラス(スタンダード)/一般カード
です。
ライフカードビジネスライトプラス(スタンダード)/一般カードの特徴は
- 年会費:永年無料
- ポイント還元率:0.5%
という点です。
一般のクレジットカードの場合は、年会費永年無料でもポイント還元率1.0%という高還元率カードも少なくありませんが
法人カードの場合は、大きく分けると
- 一般的な法人カード:ポイント還元率1.0%
- 年会費無料:ポイント還元率0.5%
の2択になってしまうのです。
法人カードの契約主体は会社経営者になります。法人カードは会社の経費支払に利用されます。
安定収入がある個人が契約主体の一般のクレジットカードと比較すると、法人カードの方がカード会社の貸し倒れリスクが高く、還元率を抑えなければならない。
という事情があるのです。
お得額比較
項目 | 利用額 | ポイント付与なしの法人カード | ポイント還元率0.5%の法人カード |
---|---|---|---|
基本条件 | ポイント還元率 | 0.0% | 0.5% |
初年度年会費 | 無料 | 無料 | |
次年度年会費(税別) | 無料 | 1,375円 | |
入会キャンペーン | 0円 | 5,000円 | |
年間ポイント付与額 | 月5万円 | 0円 | 3,000円 |
月10万円 | 0円 | 6,000円 | |
月15万円 | 0円 | 9,000円 | |
月20万円 | 0円 | 12,000円 | |
月30万円 | 0円 | 18,000円 | |
月50万円 | 0円 | 30,000円 | |
月100万円 | 0円 | 60,000円 | |
月200万円 | 0円 | 120,000円 | |
初年度年間お得額 | 月5万円 | 0円 | 8,000円 |
月10万円 | 0円 | 11,000円 | |
月15万円 | 0円 | 14,000円 | |
月20万円 | 0円 | 17,000円 | |
月30万円 | 0円 | 23,000円 | |
月50万円 | 0円 | 35,000円 | |
月100万円 | 0円 | 65,000円 | |
月200万円 | 0円 | 125,000円 | |
次年度年間お得額 | 月5万円 | 0円 | 1,750円 |
月10万円 | 0円 | 4,750円 | |
月15万円 | 0円 | 7,750円 | |
月20万円 | 0円 | 10,750円 | |
月30万円 | 0円 | 16,750円 | |
月50万円 | 0円 | 28,750円 | |
月100万円 | 0円 | 58,750円 | |
月200万円 | 0円 | 118,750円 |
筆者が経営している会社は、社員1名の小さい会社ですが
2015年に私が法人カード1枚で利用している金額は
5,886,355円
です。
約月50万円の利用があります。
内訳
- インターネット広告費:約40万円
- 光回線:約1万円
- 携帯電話:約1万円
- 接待交際費:約8万円
- 水道光熱費:約1万円
といった内訳です。
月50万円法人カードで支払いをすることは、中小企業、零細企業であっても、決して珍しいことではないのです。法人の経費で利用することになれば、簡単にこのぐらいの金額にはなってしまいます。
※2019年9月時点
年間の5,886,355円のカード利用だとした場合
年会費有料法人カードを利用していたら
初年度
- キャンペーン:5,000円分のポイント
- 年会費:0円
- ポイント:5,886,355円 × 0.5% = 29,431円分のポイント
お得額合計:3,4431円分のポイント
次年度
- 年会費:1350円(税込)
- ポイント:5,886,355円 × 0.5% = 29,431円分のポイント
お得額合計:28,081円分のポイント
のプラスになります。
一方、年会費無料法人カードを利用していたら
初年度
- キャンペーン:0円
- 年会費:0円
- ポイント:0円
お得額合計:0円
次年度
- 年会費:0円
- ポイント:0円
お得額合計:0円
で、損もしませんが、得もない状態になってしまいます。
圧倒的に「費用対効果」で考えれば
「年会費無料法人カード < 年会費有料法人カード」の方がお得
ということになるのです。
「でも、月50万円もうちの会社は使わないよ。せいぜい10万円ぐらいじゃないの?」
という方も多いと思います。
月10万円で計算しなおしてみます。
年会費有料法人カード「JCB一般法人カード」を利用していたら
初年度
- キャンペーン:5,000円分のポイント
- 年会費:0円
- ポイント:1,200,000円 × 0.5% = 6,000円分のポイント
お得額合計:11,000円分のポイント
次年度
- 年会費:1350円(税込)
- ポイント:1,200,000円 × 0.5% = 6,000円分のポイント
お得額合計:4,650円分のポイント
のプラスになります。
一方、年会費無料法人カードを利用していたら
初年度
- キャンペーン:0円
- 年会費:0円
- ポイント:0円
お得額合計:0円
次年度
- 年会費:0円
- ポイント:0円
お得額合計:0円
ですから、月10万円の法人カード利用だとしても、結果は同じなのです。
仮に全く法人カードの利用がない0円だったとしても
「JCB一般法人カード」のキャンペーン5,000円と年会費1,350円(税別)を見てみれば
- 初年度:-0円 + 5,000円 = +5,000円
- 2年目:-1,350円 = 3,650円
- 3年目:-1,350円 = 2,300円
- 4年目:-1,350円 = 950円
- 5年目:-1,350円 = -400円
ですから、5年目に突入して、はじめてキャンペーン5000円の貯金が底を着いて、マイナスになるのです。
法人カードを作っておいて、一回も使わないシチュレーションは考えにくいので、よほどのことがない限り
年会費永年無料の法人カードよりも、年会費有料の法人カードの方がお得になる
ということになります。
理由その2.信用を損なう!
年会費無料の法人カードを利用すると「信用」という名の損失を被る可能性があります。
例えばこんなシチュエーションが考えられます。
接待のシチュエーション
会計時に提示した法人カードが年会費無料の法人カードの場合
接待相手
「この会社儲かっていないのかな?仕事を任せても大丈夫なのだろうか?」
と思われています。
最悪のケース「失注」
従業員との会食のシチュエーション
会計時に提示した法人カードが年会費無料の法人カードの場合
従業員
「えっ、俺でもゴールドカード持っているのに社長が年会費無料の法人カードって。この会社儲かってないのかな?このまま働いていても、夢はないな。」
と思われています。
最悪のケース「退職」
です。
これらは極端な例ですが、全くないとは言い切れません。
全員が全員上記のような感想を持つわけではありませんが・・・
年間、売上規模100万円の取引先20名を接待した中で、1人だけでも上記のイメージを感じてしまい、失注につながったら、100万円の損失になってしまいます。
月2回、20名の従業員と会食した中で、1人だけでも上記のイメージを感じてしまい、退職につながったら、補充する人員の採用コストに100万円程度はかかってしまいます。
クレジットカードというのは、社会的な信用を示すツールでもあります。
欧米では「クレジットスコア」が就職にも影響するぐらいです。
年会費無料の法人カードを使ったばかりに、信用を落とし、大きな損失を被る可能性はゼロではないのです。
このリスクを回避するために
年会費2万円~3万円の
アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カード
ダイナースクラブビジネスカード
を持っても、月額コストは2,000円程度のものです。
社会的な信用イメージを損なうリスクを回避するための必要経費と考えれば、安いものと言えます。
理由その3.保険がない!
年会費無料の法人カードのマイナスな面は
保険が付帯されていない
ことと言って良いでしょう。
- ショッピング保険:なし
- 海外旅行傷害保険:なし
- 国内旅行傷害保険:なし
です。
例えば、アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードの場合
キャンセル・プロテクション(キャンセル保険)
病気・ケガによる入院などにより、予定していた出張や、接待用にチケットを購入済みのコンサートへ行けなくなった場合、キャンセル費用などの損害を年間最高10万円まで補償
ショッピング・プロテクション(ショッピング保険)
国内外を問わず、カードでお求めのほとんどの商品について、破損・盗難などの損害を購入日から90日間、1名様年間最高500万円まで補償
国内航空機遅延費用保険
国内出張の際、ビジネス・ゴールド・カードでチケットを購入された航空便において、遅延や手荷物紛失により発生した費用を補償
海外旅行傷害保険・国内旅行傷害保険
保険金の種類 | 基本カード会員 | 基本カード会員の ご家族*2 |
追加カード会員 | 追加カード会員の ご家族*2 |
|
---|---|---|---|---|---|
国内旅行 | 傷害死亡保険金 | 最高5,000万円 | 最高1,000万円 | 最高5,000万円 | 最高1,000万円 |
傷害後遺障害保険金 | |||||
海外旅行 | 傷害死亡・後遺障害保険金 | 最高1億円 | 最高1,000万円 | 最高5,000万円 | 最高1,000万円 |
傷害治療費用保険金 | 最高300万円 | 最高200万円 | 最高300万円 | 最高200万円 | |
疾病治療費用保険金 | 最高300万円 | 最高200万円 | 最高300万円 | 最高200万円 | |
賠償責任保険金 | 最高4,000万円 | ||||
携行品損害保険金 (免責3千円/年間限度額100万円) |
1旅行中最高50万円 | ||||
救援者費用保険金 | 保険期間中 最高400万円 |
保険期間中 最高300万円 |
保険期間中 最高400万円 |
保険期間中 最高300万円 |
と、いろいろな保険が付帯されています。
保険に頼ることが考えられるケースとしては
ショッピング保険の利用ケース
- 法人カードで、オフィスの高級家具を購入したが、破損してしまった。
- 法人カードで、最新ノートパソコンを購入したが、盗難にあってしまった。
・・・
このケースでは、購入日から90日間以内であれば、年間500万円までカード会社が補償してくれるのです。
キャンセル保険の利用ケース
- 国内出張を予定していて、ホテルと飛行機を手配していたが、急な病気により、出張がキャンセルされて、キャンセル費用が発生してしまった。
このケースでは、キャンセル費用はカード会社が補償してくれます。
海外旅行傷害保険・国内旅行傷害保険
- 出張時にケガをしてしまった。(傷害治療費用保険金)
- 出張時に病気になってしまった。(疾病治療費用保険金)
- 出張時に対抗品を紛失してしまった。(携行品損害保険金)
- 出張時に他の方に損害を与えてしまった。(賠償責任保険金)
・・・
など、経営者や役員であれば、国内、海外問わず出張をするケースは少なくありません。
国内であれば、健康保険があるので、大ごとにはなりにくいのですが、海外の場合は、保険がきかずに高額な治療費がせいきゅうされる可能性があります。これを回避するためには、「海外旅行傷害保険・国内旅行傷害保険」の充実というのは、大きなポイントになるのです。
ちなみにアメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードの場合は
「家族特約」が付帯されています。
この法人カードを持っていて、家族旅行などに言った場合には、関係のないご家族のケガ・病気・賠償責任・携行品損害なども補償してくれます。
アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードの場合は、自動付帯なので、補償額は変わってきてしまいますが、他のクレジットカードで旅行代金を支払っていたとしても、持っているだけで「家族特約」も有効になるのです。
アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードであっても、月間2,000円~3,000円のコスト負担で、ここまでいろいろな保障がつくのですから、年会費無料の「保険が一切なし」という法人カードよりも、お得と言えるのではないでしょうか。
購入商品の盗難、破損
出張時の病気、ケガ、賠償責任、携行品損害
で大きな損害を被ることを考えれば、保険が付帯された年会費有料の法人カードをおすすめします。
また、会社である以上は従業員に対する責任も発生するので、「従業員を出張させる」機会がある会社の場合は、必ず法人カード(追加カード)の利用をおすすめします。従業員が持つ追加カードであっても、保険は適用されるからです。
まとめ
法人カードの場合は
年会費無料の法人カードをおすすめしません。
なぜなら
- ポイント分を考慮すれば、年会費有料の法人カードの方がお得になる
- 信用イメージを損なう損失を考慮すれば、年会費有料の法人カードのコスト負担は問題にならない
- 購入商品の盗難、破損・出張時の病気、ケガ、賠償責任、携行品損害で被る損失を考慮すれば、年会費有料の法人カードのコスト負担は問題にならない
という理由があるからです。
どんなに高額な法人カードであっても、月間のコスト負担は2,000円~3,000円です。「絶対無料が良い」という年会費無料にこだわる意味がありません。経営者であれば「リスクヘッジ」「費用対効果」を考慮して、ある程度の年会費の法人カードを持つべきと考えます。